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指導員:A先生
検定コース:第1コース

卒業検定の前は、なかなか落ち着かなかった。
普通にやれば大丈夫だと、みんな言ってくれるんだが、その普通ができないレベルの人間なので厄介だ。

予定外のことが生じるとパニくるタイプなので、準備でなんとかなることはできるだけ潰しておきたい。
コース間違えたとか、そういうことは検定の前からリスクを減らしておけるはずだ。

検定では、教習所に行ってからコースを指定されるため、第1,第2のどちらになるかは事前にわからない。
もっといっぱいコースのある教習所もあるみたいだが、幸いここは2コースだけ。
両方暗記することにした。
第1コースは、先に練習を始めたコースではあるが、第2コースよりも若干距離が長い上に、課題が分散して出てくるので難しいイメージ。
練習期間は短いが第2コースが当たって欲しいな、という希望。

いつもの通り15分前に教習所に行った。
前日からの降雪で街には雪が積もったが、教習コースは既に除雪されていた。角の日陰に水たまりがあるが、凍ってはいないから検定はできるとのこと。コース脇のそこここに雪が溜まっているが、踏む部分ではないのでまあ大丈夫なのだろう。
はみ出して滑らないように気をつけよう。

最初にミーティングルームで説明を受ける。
検定中止事項の説明。減点の説明。
事前に勉強してきたことと同じ内容であるため、うんうんと頷いて聞いておく。
コースが示された。
SSは、第1コース。

「第1かぁ。」
若干残念ではあるが、まあこれはもちろん想定内。
そこからは第2コースの一切を忘れ、第1コースの図に集中することに。
第1コースは、スタート→坂道→一本橋→クランク→S字→スラローム→踏切→急制動→ゴール という課題の順序。
やはり中盤の低速3連チャンがポイントか。

検定用のビブスを着ける。いよいよ開始だ。
バイクに跨り慣らし運転。短い直線を行ってくるだけだ。
緊張してきた。

『じゃあバイクをスタート地点に停めてください。』
いよいよ来た!
落ち着けー。落ち着けー。
スタート地点にいったん停めて降りる。
『いつも通り走れば大丈夫ですから。みきわけOKだったんだから、検定も問題ないはずです。がんばってくださいね。』

先生の合図で、バイクに手をかける。
ハンドルを立てる。スタンドをはずす。フロントブレーキを握る。ハンドルを右に切る。前後を確認しながら跨る。リヤブレーキを踏む。ハンドルを戻す。
最初にならったことを思い出しながら、慎重に乗車。
ミラーを合わせる。エンジンスタート。合図を出して周囲を確認。1速に入れて半クラでスタート。
発車は問題なかった。
ぐるっと逆のストレートまで走って車線変更。坂道を上る。中腹で止まる。ブレーキと半クラッチを駆使して坂道発進。なんとかクリア。すぐに左折。左折したら5mぐらいですぐにT字路の一旦停止を左折。

ピピピピピー!
笛が鳴った。
びっくりして先生の方を振り返る。と同時に悟った。
しまった!早くもやらかしてしまった。コース間違い。ここはまず右折だった。その後、一本橋を終えて再度このT字路に来たときが左折だ。あれだけ時間かけて覚えたのに・・。情けない。

コース間違いは減点にならないので、気を取り直して先生の指示を仰ぐ。
半周回ってやり直しらしい。

減点にはならなかったものの、唯一自信のある分野であった“コースの覚え”での躓きは、少なからず動揺を与えた。
心臓の鼓動は早いままだ。
「関係ない。やり直せば減点でもない。問題ない。」と自分に言い聞かせる。
ゆっくりしているわけにもいかないので、すぐにコースに戻って、次の課題へ向かう。
お次は一本橋。
これも苦手な方だが、クランクやS字に比べたらまだマシだ。最近はけっこうゆっくり乗っていられるようにもなった。
乗り口を速めに入って、しっかり乗ってからスピードを落としても十分だ。アクセルは多めに開ける。シャフトのジャイロ効果が多少でも助けてくれるはず。
もし少しぐらい早く下りてしまっても、減点になるだけで検定中止になるわけじゃない。
大丈夫だ。

手前を直角に曲がって一本橋のスタートラインに着く。

あ。

やってしまった。
停止線で、若干斜めに停めてしまった。
これをびしっとまっすぐ止められるか、入口で曲がった名残で斜めになってしまうかではかなり難易度が違う。難易度以前に気分が違う。
『やべー。』
しかし停めてしまったものは仕方がない。これぐらいの斜めでも、乗り口でちょっとふらつくぐらいでいつも乗れているではないか。
大丈夫だ。

コース間違いの動揺も冷めやらぬ間に、またしても不安要素を抱えてしまった。かなりどきどきしているのがわかる。落ち着こうとしてもなかなか静まらない。
『では、どうぞ。』ストップウォッチの準備が出来て、先生が促す。もう暇はない。
しゃーねー。行くか。

半クラでスタート。ぶぃぃん。
上り口の斜面に前輪を合わせる。
斜めからのスタートなので、一本橋にまっすぐ入るのが難しい。前輪の先に集中する。上り口に入る。
「えぃっ!」
上った。

バイクが左に引き寄せられる。ハンドルでバランスをとろうとする。修正できない。焦った。クラッチを握ってしまった。


ごっとん。


落ちた・・・。


『ハァ~!!?』
ストップウォッチを見つめるA先生。
『びっくりして思わず止めちゃったけど、1秒なんて初めて見た!』


一本橋、・・・落ちた。

1秒で落ちた。

練習でも見たことの無いような最速タイムを叩き出した。


悔しいやら恥ずかしいやらでうなだれているSSとは対照的に、先生はストップウォッチ片手に楽しそう。

『これ、みんなに見せよ♪』



こうして、【一本橋を1秒で落ちた男】は生まれた。
DSC01085.jpg


不本意ながらも、伝説達成。
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SS。(えすえす)

Author:SS。(えすえす)
こんにちは。『えすえす。』です。
いろんなものがSS。
呼び名がSS(しんしん)。
元職場のビルがSS(SS30)。
交通手段がSS(SendaiSubway)。
身長がSS。足のサイズがSS。体重だけLL。
人間の器がSS。肝っ玉もSS。そのくせ態度だけXL。
でも名前の由来はもちろん愛車。
CB400SS。はじめてのバイク。
週末にはバイクに跨り、バイクにいたぶられて、くじけ続ける日常を、恥を承知で曝します。

住所:宮城県仙台市
出身:岐阜県中津川市
年齢:34
性別:漢
趣味:ツーリング,釣り,飲み
特技:検定中止,坊主,外道,紛失
歴史:
 生まれ→高校:岐阜県中津川市,大学→大学院:岩手県盛岡市,空白の3年間:岩手県盛岡市,社会人→落武者:宮城県仙台市

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